迷子の眠り姫〜sweet kiss〜*下*




――……
―――………






「珍しいわねぇ。みさきちゃんが起きてこないなんて。」



コーヒー片手に、母さんが呑気に呟いた。



「美味しい朝ご飯を期待してたんだけどなぁ…」



あからさまに残念そうな顔をして。

目の前に置かれたトーストに手を伸ばす。



「……俺の作ったもんに何か文句でも?」



フライパンを握ったまま、ひと睨みすれば、



「やぁねぇ。そんなこと言ってないでしょ。

息子の作ったものを食べて仕事に行けるなんて、ホント幸せだわ。」


「…どうだか。」


「ただ、今日はパンじゃなくてお味噌汁がよかったなぁ…なんて。」



……この母親はっ。


夜勤明けにも関わらず、
すぐに病院に戻らなきゃいけないって言うから…


人が心配して…

感謝とねぎらいの意味を込めて、こうしてキッチンに立ってるってのに。


ったく…



「でも…みさきちゃん、どうかしたの?具合でも悪いの?」



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