迷子の眠り姫〜sweet kiss〜*下*
「もう、すぐに出かけるのよね?」
「うん。」
「あら。じゃあ、一緒に行きましょうか?
櫂がいるなら、タクシー使っちゃおう。」
1人で落ち込む俺のことなど気にせずに、弾んだ声を上げる母さん。
アイツも…
隣で食事を続けながら、
心なしか嬉しそうで。
なんだか、俺が邪魔者みたいな気になってくる。
…“親子水入らず”ってやつにしてやったほうがいいのかな?
いや、俺も“親子”だけどさ。
「俺、もうひと眠りするから。食べたら置いといて。」
片付けはあとでやっておくから。
そう言って、リビングを出ようとした…とき。
「航も、一緒に行かない?」
さらっと。
子供みたいな無邪気な調子で、母さんが俺に呼び掛けた。
「……は?」
「これから、別に用事はないでしょ?」
「そりゃそうだけど…」
「ホラ、みさきちゃん調子悪いみたいだし、診察がてら、一緒に……」