迷子の眠り姫〜sweet kiss〜*下*




患者さんのところだって言うから。

教えてもらった病室に向かった。



「ここ…だよな?」



最上階。

エレベーターを降りたところで一瞬戸惑った。


今までの階とは大違い。

廊下にはほとんど人気がなくて…いわゆるVIPの病室だってすぐにわかったから。


完全個室。

周囲の目が気になる有名人とか、ワガママな金持ちが泊まる、アレ。


この病院にもあったんだ?



俺なんかが気軽に入っていいのかな?


近藤さんは、
「航くんを通すように言われてるから」と、

笑顔で送り出して、普通にエレベーターに乗せてくれたけど…


気まずい。


さっさと母さんを見つけて帰ろう。



決意して、廊下を足早に歩き始めたとき。



「え……?」



タイミングよく、手前のドアがガーッと開いて。



「あ…」



出てきた人物を見て、思わず固まってしまった。



「な…んで?」



無言で見つめ合うこと数秒。



「あ、航、来てくれたのね?」



< 117 / 334 >

この作品をシェア

pagetop