迷子の眠り姫〜sweet kiss〜*下*




「……それじゃ。また明日ね。気をつけて帰るのよ?」



いい、って言ったのに。


俺を見送るために、母さんはわざわざ入り口まで出てきてくれた。


俺が1人のときは、いつもそうだ。


もうそんなふうに心配されるような年じゃないのに……


母さんにとって俺は、いくつになっても“子供”のままなんだろうな。



「……母さんも。仕事頑張って。」



帰ろうとする俺と、笑顔で手を振る母さん。


時間も時間だからか、行き交う人たちの物珍しそうな視線が突き刺さる。


看護師さんも患者さんも……そりゃびっくりだよな。


馴染みの顔も多いだろうに、恥ずかしくないんだろうか?


そんなことを思いながら、俺は足早にその場を後にした。




……ここは、


この辺りで一番大きな総合病院。


優秀な医師も最新器具も、すべて揃っていると評判の病院。


そして、母さんの職場でもある。


家からはだいぶ遠いけど、俺は最近、毎日のようにここに来ている。








入院中の祖母の見舞い、に。




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