迷子の眠り姫〜sweet kiss〜*下*
君を好きになった理由
――「じゃあ、行ってくるね。」
電話の向こう。
素っ気なく。
でも、若干甘さの含んだ声でみさきは言った。
「気をつけて…」
俺も。
なるべく、何でもないフリをして応えて…通話をオフにする。
「はぁっ…」
そのまま、ケータイを投げ出してベットに寝転べば、自然と漏れるため息。
「1週間、かぁ…」
長いよなぁ。
耐えられるかな?
思いつつ、枕に顔をうずめれば、甘い香りが微かに鼻をくすぐった。
みさきの、匂い。
昨夜もここで一緒に過ごしたわけだから、当然っちゃ当然なんだけど…
今の俺には、キツイ。
だって…
「“電話もメールもしない”なんてルール、作らなきゃよかったよ。」
今は夏休み。
みさきは毎年この時期になると、亡くなった“お母さん”の実家に行く。
お父さん、と2人で。
それは、再婚した今でも続いている習慣らしい。
でも…
「なんで、今年は長いんだろう?」