迷子の眠り姫〜sweet kiss〜*下*




「だから、せいぜい今のうちにゆっくりしててよ。」



立ち尽くすアイツに背を向けて。

俺はさっさとその場を後にした。













……ダメだ。


どれだけ言葉で威嚇しても、不安は全然治まらない。

みさきの気持ちを信じていても、安心していられない。



理由なんて、本当はとっくにわかってるんだ。



全部、アイツのせい。




アイツがここにいる限り。

俺の生活に入り込んでいる限り。

みさきのことを“忘れられない”限り…



俺がこの不安から解放されることはない。





アイツが、自分からみさきに何かアクションを起こすことはないと思う。


みさきの気持ちは嫌と言うほどわかってるだろうし、

何よりアイツは、何かを強引に手に入れようとするタイプじゃないから。


…と言うより、
“自分で”手に入れる方法なんて知らないかもしれない。


望むものは、すべて“与えられて”来たんだから。


黙っていても、手に入ったんだから――



< 135 / 334 >

この作品をシェア

pagetop