迷子の眠り姫〜sweet kiss〜*下*
「だから、せいぜい今のうちにゆっくりしててよ。」
立ち尽くすアイツに背を向けて。
俺はさっさとその場を後にした。
……ダメだ。
どれだけ言葉で威嚇しても、不安は全然治まらない。
みさきの気持ちを信じていても、安心していられない。
理由なんて、本当はとっくにわかってるんだ。
全部、アイツのせい。
アイツがここにいる限り。
俺の生活に入り込んでいる限り。
みさきのことを“忘れられない”限り…
俺がこの不安から解放されることはない。
アイツが、自分からみさきに何かアクションを起こすことはないと思う。
みさきの気持ちは嫌と言うほどわかってるだろうし、
何よりアイツは、何かを強引に手に入れようとするタイプじゃないから。
…と言うより、
“自分で”手に入れる方法なんて知らないかもしれない。
望むものは、すべて“与えられて”来たんだから。
黙っていても、手に入ったんだから――