迷子の眠り姫〜sweet kiss〜*下*
だからこそ、
怖いんだ。
アイツは何でも手に入れてしまう。
何の努力もせずに。
それが当たり前みたいに。
――……
―…
「航にあげるよ。」
あれはいつかのクリスマス。
自分がもらったプレゼントの包みを、アイツは俺に差し出した。
「……え?」
開けなくてもわかってた。
その中には、俺が欲しがっていたおもちゃが入ってて。
俺が持ってる包みの中には、全然欲しくもない“妥当な”プレゼントが入っていること。
用意するのは両親だけど、
許可を出すのは“あの人”だったから。
俺が、自分の欲しいプレゼントをもらった試しなんてなくて。
俺の欲しいものは、いつもアイツの手の中にあったから。
「航にあげようと思って、おばあちゃんにこれを頼んだんだ。」
「え…?」
「僕は別にいらないから。航がもらって?」