迷子の眠り姫〜sweet kiss〜*下*
「ハイ。」
おばあちゃんには内緒だよ、って言って。
それを俺の手に押しつけて、にっこり笑って…
アイツは“おばあちゃん”のいる部屋へと戻って行ったんだ。
「……っ!」
アイツが出て行ってすぐ、
俺は、ドアに向かってそれを思いっきり投げつけた。
……こんなの、全然欲しくない。
同情?哀れみ?
親切のつもりだったのかもしれないけど、
自分の“立場”ってものを、俺はその時改めて思い知らされたんだ――
アイツが望めば、
何でも簡単に手に入る。
俺は、
それをよく知ってるから。
アイツが、
本気でみさきが欲しいと望んだら、
きっと――
「……すいません。
お忙しいところ、呼び出してしまって。」