迷子の眠り姫〜sweet kiss〜*下*
「たぶん、俺だけじゃないですよ。」
少し落ち着いてきたのか、穏やかな笑みを浮かべながら続けるメガネ君。
「きっと、みんな同じように思ってたと思います。」
「え?」
「女子はもちろんだけど、男子の間でも、先輩は“憧れの的”だったから。」
……うわぁ。
なんか、めちゃくちゃ照れるって言うか妙に気恥ずかしい。
このメガネ君が冗談やお世辞を言うタイプじゃないってわかるから、余計に。
まさか、自分が人からそんなふうに見られてるとは思わなかった。
しかも、みさきのことで…
「今も続いているんでしょう?」
恥ずかしすぎて直視できないでいるにも関わらず、メガネ君はまだしゃべる。
「お似合いでしたもんね。まさに“美男美女”で…
他人が入り込む隙なんてないって言うか…」
「いや…」
「先輩に適う男なんて、いませんからね。」
……気づかなかったけど。
必死すぎて、そんな余裕はなかったけど…
知らないうちに、俺は望みどおりの“自分”になれてたんだな。
みさきに“ふさわしい”男ってやつに――