迷子の眠り姫〜sweet kiss〜*下*
最初は、単なる“好奇心”だった。
みんなが憧れる綺麗な女の子。
会ってみたら噂通りで。
普通に胸が高鳴って、
ああ、俺も好きだなって思った。
でもそれは、アイドルに対する“好き”と一緒。
“つき合いたい”とか、
現実的な望みがあるわけじゃない。
見たいな、とか。
ちょっと話してみたいな、とか…
その程度の感情。
みさきに出会ったとき、正直、俺はそのくらいにしか思ってなかった。
仲良くなれたらラッキー。
そのくらい。
でも……
委員会でたまたま同じ当番になって。
話す機会ができた。
せっかくなら、仲良くなりたい。
そう思って距離を縮めていって……
最初はめちゃくちゃ警戒していた彼女が、
「航くん」って
俺を名前で呼んでくれるようになった頃。
俺の“好き”の意味は、
大きく変化していた。
“仲良く”なるだけじゃ、ダメだ。
“特別”になりたい。
初めての感情だった。