迷子の眠り姫〜sweet kiss〜*下*




――助けてあげたい


って、心のどこかで思ったんだと思う。



みさきはいつも、どこにいても居心地が悪そうだったから。


それはまるで、あの家にいた頃の俺と同じ。


本当は全然違うのかもしれないけど…

俺にはそう見えて。
感じるものがあったから。




そして、

助けられるのは自分しかいない、って。


なぜか勝手に思ってしまったんだ。




俺は知ってるから。


どうすれば、そこから抜け出せるのか。

楽になれるのか。



感情を表さない彼女。

笑顔にできるのは俺だけなんだ、って。



俺が、助けてあげなきゃ。

俺が、


“居場所”を作ってあげよう、って――








今思えば、

なんて身勝手な思い込み。



間違っていたら、どうするつもりだったんだろう?

“幼さ”って怖い…




でも、

それを信じて、俺はみさきに近づいた。


慎重に、少しずつ仲良くなって。


もう少しだ、って思ったとき。





あの“事件”が起こったんだ―――



< 144 / 334 >

この作品をシェア

pagetop