迷子の眠り姫〜sweet kiss〜*下*
ガサゴソと。
手にしていた袋から慌てて何かを取り出して。
みさきは俺の後ろにいた母さんに差し出した。
「あら。ありがとう!
でもそんな…気を遣わなくてよかったのに。」
申し訳なさそうに言いながらも、顔はすっかりほころんでいて。
「せっかくだから、出勤前に少しだけいただこうかな。」
浮かれた足取りで、リビングにUターン。
「ほら、みさきちゃんも航も早く早く。」
言葉では促しているものの、全くこっちを見ていない。
…この人は。
みさきが持ってきたのは、母さんの大好物。
何だかんだ言って、毎年買って来てもらうのを楽しみにしてるんだよなぁ。
まぁ、円満なのはいいことだけど。
でも…
「…えっ?」
母さんに続いて。
リビングへ入ろうとしていたみさきの腕を掴んだ。
「航くん…?」
「みさきは、こっち。」
「え?ちょっ…」
そのまま。
俺はみさきの手を引いて、自分の部屋へと急いだ。