迷子の眠り姫〜sweet kiss〜*下*
「もうすぐできるから、ちょっと待っててね。」
どうやら料理の真っ最中だったらしく、
俺をリビングに招き入れるとすぐにキッチンに戻った母さん。
俺にはソファーでくつろぐよう促して、
自分の部屋に行こうとした航を無理矢理引き止めて……
なぜか、揃って同じ空間にいる状況。
しかも、俺と航は微妙な距離を取って座っているわけで……。
なんか、妙に気まずい。
沈黙の中、時計の針の音だけが耳に響く。
キッチンからは、“わーっ”とか“ぎゃっ”とか、母さんの叫びが時折聞こえてくるけど……って、
大丈夫なんだろうか?
「航!ちょっと手伝って!コレ混ぜてて。」
手に追えなくなったのか、とうとうキッチンから顔を出した母さん。
「……慣れないこと、するから。」
ため息をつきながらも、航は立ち上がって渋々キッチンへ。
1人残されたものの、息苦しさから解放された俺の呼吸は、ものすごく楽になった。