迷子の眠り姫〜sweet kiss〜*下*
こんなふうになるとは
思わなかった。
今日だって。
いつものように、
航くんの家に行って。
ご飯を作って
一緒に食べて。
夜になったら
隣で眠るんだと思ってた。
なのに…
もう少し、我慢するべきだったのかな?
気づかないフリを続けるべきだった?
ううん…
満足するべきだったんだ。
今の現状に。
航くんの“気持ち”に――
私を“好き”だと言ってくれたこと
私を“好き”になってくれたこと。
それは、決して嘘ではないと思う…思いたい。
でも、
その根底には、やっぱり彼の“存在”があった。
私の“好き”と
航くんの“好き”は、
同じように見えて、
全然違う。
スタートが違う、から。
無意識に“好き”になった私と
意図的に“好き”になった航くん。
始まりが違うと、
同じゴールにはたどり着けないんだよ。
“私”は、
先輩…ううん、
“お兄さん”には勝てなかったんだ。