迷子の眠り姫〜sweet kiss〜*下*
“彼女”か……。
それはもう、紛れもない事実。
変えられない現実。
航の想いは本物で、
アイツが彼女を救った。
傍にいて、支えて守って……立ち直らせた。
それは、航だからできたこと。
痛みや悲しみを知っているアイツだから、できたんだ。
自分のことで精一杯だった俺には、一緒に堕ちて行く道しか選べなかった。
そこから抜け出す方法なんて知らなかったから……
「よし!できた。」
母さんの声にハッとして振り返る。
「久しぶりにしては上出来じゃない?」
「……ほとんど俺が作り直したんだけどね。」
得意気な母さんの横で、ひどく疲れた様子の航。
「母さんは、料理には向いてないんじゃない?
こりゃ、おとなしく任せてて正解かもね。」
「そうねぇ。私もそんな気がしなくもないわ。
これはもう、さっさと航に結婚してもらうしかないわね。」
「は?」
「みさきちゃんにお嫁に来てもらえば、安心だもの。」
「だから、コキ使うなってば……」