迷子の眠り姫〜sweet kiss〜*下*
「修学旅行とか、大変だったもんね。みさき、ずっと寝不足でフラフラしてて…」
困ったように、
でも、懐かしむような表情で続ける茉奈。
「結局、途中で倒れちゃって…旅館に戻って、1人になって爆睡。」
「それは…」
「そしたら、すっかりよくなって。先生たちもびっくりだったっけ。」
「あのときは、暑さで具合が悪くなったんだよ。」
中学のときに行った初夏の京都。
あれは、たまたま…
「あのときだけじゃないでしょ?」
「え…?」
「うちに泊まりに来たときもだし…ほら、マドカちゃんとも無理だったって言ってたじゃない。」
「あ…」
確かに。
小さい頃から、ずっと1人で寝ていたせいか、
家族とさえ、私は同じ部屋で眠れない。
落ち着かないんだ。
前に、ホラー映画を観て眠れなくなったマドカが私の部屋で寝たときも…
安心して熟睡するマドカとは対照的に、
私は結局、朝まで一睡もできなかった。
うたた寝なら平気なんだけど…
「平気なのは、
航ちゃんだけでしょ?」