迷子の眠り姫〜sweet kiss〜*下*
「………。」
明かりが消えて、しばらく経った。
規則正しい茉奈の寝息と。
暗闇に慣れ始めた私の目。
――眠れない。
茉奈にはああ言ったものの、
やっぱり落ち着かなくて。
瞼を閉じても、
全然、眠りに堕ちることができなかった。
夜って、長いんだな。
長くて、寂しい。
ひとりの夜って、
こんなに辛かったんだ――
もちろん、
今までだって、何度もひとりで夜を過ごしてきた。
自分の部屋で。
私だけのベットで。
でも、
あの温もりがいつも傍にあったから。
会わない夜は、
それを思い出しながら眠って。
それを忘れる前に、
また、一緒に眠って。
その繰り返し。
だから、
寂しいなんて感じることはなかった。
“また”があったから。
それまでの我慢、だったから…
私はいつも、
安心して眠っていられたんだ。
あの日から、ずっと―――