迷子の眠り姫〜sweet kiss〜*下*
「目標があるから。それを達成できるまでは我慢する。」
最初にそう言った航くん。
その“目標”が何だったのかがわかったのは、
航くんが高校に入学してきたときで。
“新入生代表”の挨拶を終えた、その日。
帰り道で、
航くんは私に言ったんだ。
「次にうちに来るときは、同じベットで眠ろうね?」
って。
その言葉通り、
私と航くんは……
それから。
私たちはずっと。
お互いの体温と
息づかいと
肌を感じながら、
夜を過ごすようになった。
私は航くんの隣では、
なぜかぐっすり眠れて。
航くんの隣じゃないと
眠れなくなってしまった。
抱きしめられるだけで幸せだったのに…
触れ合う歓びを覚えてしまったら、手放せなくなってしまった。
私は常に、航くんの温もりを欲していた。
それは航くんも同じだったのかな…?
わからないけど…
私たちは、
お互いの体温を共有するくらい、近い距離で生きてきたんだ。
それを“失う”日が来るなんて
思いもせずに――