迷子の眠り姫〜sweet kiss〜*下*
「……ん。」
今度は、近くにあった手鏡を差し出す茉奈。
覗いてみれば…
「あ…」
「ね?それじゃ帰れないでしょ?」
「…うん。」
見事に腫れ上がった瞼。
顔色は悪いしむくんでるし…こんなんじゃ、
さすがに聡子さんもマドカも不思議に思うよね?
心配をかけるわけにはいかない。
「ごめん、茉奈。
今日もお世話になっていい?」
「私はかまわないけど…
みさきは大丈夫なの?」
「え?」
「眠れなくて…平気?」
心配してくれているみたいだけど…
「大丈夫。」
私は、弱々しくも茉奈に向かって微笑んだ。
「みさき…?」
だって、
同じだもん。
家に帰って、
ひとりになっても、
私はきっと眠れない。
どこに行っても同じなの。
そこに
航くんがいない限り。
どこでも同じ。
こんなことになるなら
失うなら
最初から
知らなければよかった――