迷子の眠り姫〜sweet kiss〜*下*
4人掛けのテーブル。
でも、そのうちの1つは見事に“物置”と化していて…実質、3人掛け。
……いつも、ここでどんなふうに食事をしているのかが容易に想像つく。
一緒、なんだろうな。
「大学のほうはどうなの?」
ボーッとしたまま箸が止まっていた俺に、
「2年生になってから専攻を変えるのって大変なんでしょ?」
さりげなく料理の皿を差し出す母さん。
「まぁ…」
受け取りつつも、曖昧に濁す。
そう言えば、前にちらっと話したんだっけ。
母さんに、だけ。
まだ父さんたちには言っていない。
だから……
斜め前に座る航をちらっと見る。
コイツが父さんに言うわけないだろうけど、やっぱり気になるから。
「話すなら、早いうちがいいわよ?
それか卒業まで隠し通すか……じゃなきゃ後が大変なんだから。」
そんな俺に気がついたのかどうかわからないけど、母さんは真面目な顔で言った。
航は……
俺の視線に気づいたのか、一瞬だけこちらを見たものの……
すぐに目をそらされてしまった。
また、か。