迷子の眠り姫〜sweet kiss〜*下*
「…もう寝ようかな。」
バイトの話は嘘じゃない。
昨日、面接に行って、
明日から働くことになっている。
居ていいとわかってても、
あまり家にはいたくない。
かと言って、行くところもない。
そんなときに、偶然見つけた貼り紙。
そろそろバイトもしなくちゃ、と思っていたところだからちょうどよかった。
時給はすごく安いらしいけど…
私にはぴったりな仕事。
“居場所”が見つかってよかった――
「これ、どうしようかな?」
ベットに入って。
枕元から取り出した“それ”を眺めた。
「“本物”なんて、もうもらえないもんね…」
だから、私は自分で外したんだ。
次なんてあり得ないから。
これ以上、指に馴染ませるわけにいかない。
たぶん、一生、
ここに指輪が来ることはないんだから……
これをくれたとき、
航くんはどんな気持ちだったのかな?
あの約束は“本物”だった…んだよね?