迷子の眠り姫〜sweet kiss〜*下*

王子様の傷痕





「…あ。」



バイトを始めて3日目。


貸し出して戻って来た本を棚に戻そうとカウンターを出たところで、

“また”会ってしまった。



「こんにちは。」



頭だけ下げて、通り過ぎようとしたのに…



「……待って!」



引き止められてしまった。

でも…



「すいません。仕事中なので。」



今、ここで立ち話をするわけにはいかない。

館内は静かで。

夏休み中で人はまばらとは言え、真剣に利用している人もいる。


何より、ここはカウンターの真ん前。

他のバイトの学生や司書さんもいるから。


昨日、同じバイトの子がここで友達と長話をしていて怒られたばかりだし。



「これ、片付けなくちゃいけないので…失礼します。」


「え…?あ…」



何か言いたげなその人から視線をそらして。

本をかかえて、私は足早にその場を離れた。





なんで…

会っちゃうのかなぁ?



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