迷子の眠り姫〜sweet kiss〜*下*
「ごめん。どうしても気になって…」
書庫の奥。
ちょうど人気のない一角。
最後の本をしまい終えたところに、先輩はやって来た。
まるでタイミングを見計らったみたいに。
「……なんですか?」
なるべく目を合わせないように。
距離を取りつつ、カウンターのほうへ足を向ける。
「いや…」
私の行く手を遮りつつも、なかなか言葉は出てこない。
でも、言わなくてもわかってる。
先輩が何を言おうとしているのか、くらい…
「航のこと…なんだけど……」
……やっぱり。
「最近、家に来てないんだって?」
「………」
「あ…いや。俺もあの後、すぐに実家に戻ったから…母さんに聞いたんだけど…」
“あの後”…
航くんと最後に会った日のこと…だよね?
「もし、何か行き違いがあったなら…「関係ないですから。」
「え?」
「先輩には、関係のないことでしょう?」