迷子の眠り姫〜sweet kiss〜*下*




「…いいよ?」



答えると、



「ホント?じゃあ、早速…」



パアッと瞳を輝かせて、何やら急いで自分の部屋へと駆け込むまどか。

もしかして…



「今日はコレ。明日の数学の予習、教えて?」



戻って来たまどかの手には、しっかりと教科書が握られていた。


今日から…って言うか、“今から”なのね?


私、帰って来たばっかりなんだけどなぁ。

…まぁ、いいか。


このまま1人で部屋にこもったら、またいろいろ考えてしまいそうだから。


少しでも、気が紛れたほうがいい。





航くんのこと、とか。

航くんと先輩のこと
成海の家のこと…



昼間、先輩に会ってから、もうずっと、そのことばかりが頭を巡っている。


そしてずっと、
先輩を“悪者”にしちゃってる。



先輩は悪くないのに。

悪いのはきっと…





……あ。


いそいそと。
私の部屋で勉強の準備をするまどかを見ながら気がついた。



まどかは…
知ってるんだよね?


昔の航くんのことも。
先輩のことも。

2人に何があったのか…も。



だったら……




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