迷子の眠り姫〜sweet kiss〜*下*
「コウちゃんはね、昔からすっごくやさしかったよ」
まどかの話を黙って聞く。
「今と一緒。みんな、コウちゃんの周りに集まって…いつも輪の中心にいたの。」
男の子も女の子も。
みんな航くんのことが大好きで。
その頃から“人気者”だったらしい。
「やさしいし賢いし面白いし…みんなコウちゃんと遊びたがって、順番待ちだったくらいだよ。」
まどかは、懐かしそうに微笑んだ。
「だから、私も大好きだった。…あ、そういう“好き”じゃないよ?憧れって言うか…今は違うし」
私に気を遣ったのか、慌てて否定するまどか。
もう…いいのに。
「それに比べると…
カイくん…あ、コウちゃんのお兄さんね、」
まどかは、私と先輩の接点を知らないんと思う。
学校も違うし、航くんとは別々に暮らしていたわけだし…
何より、
あのときまどかは、まだ小学生だったから。
聡子さんはきっと、まどかには何も言っていないはずだ。
「カイくんは、コウちゃんとは正反対だった。」