迷子の眠り姫〜sweet kiss〜*下*
「いつも1人で。
話しかければ答えてくれたけど…自分から、みんなの輪に入って来ることはなかったなぁ。」
だから、実はあんまりよく知らないの、と。
まどかは困ったように笑った。
「それに、カイくんはいつも忙しそうだったから。」
「…え?」
「なんかいっぱい習い事とかしてて…ほとんど家にいなかったみたい。」
家にいなかった?
「あそこのおばあちゃんが厳しい人でねぇ。私もよく怒られたんだけど…」
挨拶がなってない、とか
家の前で遊ぶな、とか。
近所の子供たちにとって、かなり怖い存在だったらしい。
「カイくんは毎日、そのおばあちゃんと出かけてたの。」
いつもは怖い顔なのに、先輩にはすごくやさしい笑顔を向けていた“おばあさん”。
子供ながらに、まどかは不思議だったと言う。
「だから、コウちゃんと私はいつも、帰るのが最後だったんだよね。」
「え?」
「夕方になると、他の友達にはお迎えが来るけど…
コウちゃんも私も、親の仕事が終わるまではひとりぼっちだったから。」