迷子の眠り姫〜sweet kiss〜*下*
前に、おばさんに聞いたことがある。
成海の家は、代々続く旧家で。
由緒正しい家柄ゆえ、“当主”の権力は絶対なんだ、と。
そんな成海家を支配しているのは…
夫に先立たれ、早くに跡を継いだ
航くんの“おばあさん”なんだ、と――
それ以上のことは何も聞かなかった。
おばさんが話すこともなかったし、
私も特に興味はなかったし。
そのときは、軽く聞き流していた。
でも…
きっと、そこだ。
重要なのはそこ。
すべての原因は……
「…実咲ちゃん?」
ぐるぐると考えすぎて、いつもよりも長引いてしまったお風呂。
次はまどかが入るはずだから…と、部屋へと急いでいたとき。
「ちょっといいかしら?」
階段の前で聡子さんに呼びとめられた。
「え…?」
振り返れば、いつになく真剣な顔をした“お義母さん”がいて。
思わず、体が強張る。
何だろう…?
「あ…。ごめんなさい。
そんなに身構えなくて大丈夫よ。でもちょっと、気になることがあって…」