迷子の眠り姫〜sweet kiss〜*下*
偶然の再会
「うちに来ればいいじゃない。」
あっさりと、何の躊躇いもなく母さんは言った。
「え…?」
どう返していいのかわからずに、とりあえず次の言葉を待つ。
「あそこから通うのは大変でしょ?
帰りが遅くなったときとか、次の日の朝が早いときとか…泊まってっていいわよ?」
「でも……」
「大丈夫よ。そのくらいは許してくれるって。
私からあの人に言っておくし。それに……」
一瞬だけ顔を歪めてから、母さんは続けた。
「夜もギリギリまでいられるし、朝も顔を出して行けるから、“おばあさま”も喜ぶでしょ。」
皮肉まじりに紡ぎだされる“名前”。
その呼び方に込められた想いが嫌でも伝わってくる。
……相変わらず、だな。
「もうすぐ夏休みだし、どうせなら休みの間ずっといたら?」
「え?」
「ここにも毎日通えるし、私も“息子”と暮らせるし……いいことづくめだと思わない?」