迷子の眠り姫〜sweet kiss〜*下*




両親が離婚したのは、

航が小学校を卒業した直後のこと、だった。


たぶん、母さんはずっと前から計画していたんだと思う。


俺たちが小学校に上がって落ち着くとすぐに、仕事に復帰した母さん。


少しずつお金を貯めて、家を出る準備を進めていたに違いない。


あのまま、あそこにいたらダメになってしまうから。


母さんも航も、

父さんも俺も。


あそこで、みんなで幸せに暮らすなんて無理だから。




原因は、両親にあるわけじゃない。


2人はとても仲がよかったし、

別れてからも定期的に会っている…みたいだし。


父さんが未だに母さんを想っていることくらい、誰の目にも明らかだ。


母さんだって、同じだと思う。



原因は……





「あなたは、この家にふさわしくない。」



何度も聞いた、あの言葉。



「男は“跡取り”が1人いればいいんです。」



冷たい視線。



「あなたもその子も、
うちには必要ないんですよ。」





そう言い放ったのは……




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