迷子の眠り姫〜sweet kiss〜*下*



「…なんですか?」



通されたのは、1階の1番奥の和室。

普段は使われていないけど…お父さんや聡子さんが、仕事でたまにこもったりするところ。

書斎みたいな感じ?



だからこそ、なんだか怖い。

こんなところで…

改まって、一体何を話そうって言うんだろう?



「ごめんなさいね。急に…」



恐縮しつつも、私に座布団を差し出して、座るよう促す聡子さん。


仕方なく、おとなしくそこに腰を下ろせば、

自然と向き合う格好になって…また、気まずい。



「こんなところで申し訳ないんだけど…」


「いえ…」


「でも、どうしても話しておきたいことがあって…」



自分の部屋でテレビの特番に夢中になっているまどか。

残業で遅くなる、と連絡してきたお父さん。


聡子さんは、そのタイミングを利用したようだ。



「さっきね、まどかに言われたの。」



少しの沈黙の後、意を決したように聡子さんが口を開いた。



「もし、詳しく知ってるなら実咲ちゃんに教えてあげてほしいって。」


「え…?」


「成海さんのお家の…航くんのこと、について――」



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