迷子の眠り姫〜sweet kiss〜*下*



「……っ」



どう反応していいのかわからない。

聡子さんの言葉をどんなふうに受け取ればいいのか…



「自分では、気づいてないかもしれないけど…」



そんな私を、やさしい瞳で見つめる聡子さん。



「実咲ちゃん、随分変わったのよ?」


「え…?」


「表情も雰囲気も柔らかくなって。“人間らしく”なった。」



人間らしい…?



「こんなこと言ったら、失礼かもしれないけど…

出会った頃の実咲ちゃんは、綺麗な“お人形さん”みたいだったから。」


「人形…?」



聞き返した私に、黙って頷く聡子さん。



「…そう。感情を殺して、無理して生きてる感じだった。」



そんな…

そんなつもりは…



「助けて…あげたかったんだけどなぁ。」


「え?」


「“家族”になることで、それを変えられるかと思ったんだけど…無理だった。」


「聡子さん…」



努めて明るく言っているものの、哀しげな瞳は隠せない。

私は…



「実咲ちゃんを救ってくれたのが、“航くん”だったんでしょ?」



< 202 / 334 >

この作品をシェア

pagetop