迷子の眠り姫〜sweet kiss〜*下*
呼び止めたのは、私。
いつものように、勉強をしに図書館に来ていた先輩に声をかけた。
あの日以来、会話どころか視線を交わすことすらなかったけど、
先輩が毎日決まった時間にここに来ていることは知っていたから。
私のシフトと微妙に被ってたから、監視されてるみたいで最初はすごく嫌だったんだけど…
すぐに、それが自分の“思い上がり”だってことに気づいた。
先輩は純粋に“勉強をしに”ここに来ている。
いつも熱心に勉強する姿は司書さんたちの間で、以前から評判だったらしく…
むしろ、私が邪魔をしてしまっているのかもしれない。
「お勉強中、すみません。」
「いや…」
「すぐ、すみますから…」
……気まずい。
“話がある”と、誘っておきながらも、なかなか言葉が出てこない。
まずこの間のことを謝って、次は……
「……?」
黙り込む私を、不思議そうに見ている先輩。
これじゃいけない。
何か話さなきゃ…
「お勉強、大変なんですか?」