迷子の眠り姫〜sweet kiss〜*下*
「え…?」
「あ…いや。毎日、頑張ってるみたいだから…」
「ああ…」
……違う。
本当に話したいのは、そんなことじゃないのに。
世間話をしてる場合じゃないのに…
ダメだ。
やっぱり、うまく話せない。
前から、そうなんだ。
先輩とは、最初からこんな感じだった。
一緒にいても、沈黙ばかりで。
“会話”なんて、ほとんどなくて…
最近、ようやく話せるようになったと思ったのに…
それはただ、航くんがいたからで…
航くんの話だったから…
先輩と、きちんと向き合えるようになったわけじゃなかったんだ――
「……“心理学”?」
顔を上げられなくて。
視線を下へと落としたままだった私。
先輩の手元。
ふいに目に入ったタイトル。
細かいところまではよく見えないけど…
「先輩の専攻って…」
聞いたことはなかった。
特に気にしてもいなかったし。
でも…
この前カウンターで頼んでいた本も、言われてみればそういう系統のタイトルだったかも。
「あー…うん。」