迷子の眠り姫〜sweet kiss〜*下*
それは、私にとって絶妙なタイミングだった。
お父さんと聡子さんが再婚して、しばらく経って。
自分の“役割”を失って…
家に帰りたくないから、図書館にいた私。
“私なんか、いなくてもいい”
毎日、そう思って生きていたから。
先輩の誘いは、
“救い”だと思った。
でも―――
電車とバスと乗り継いで。
知らない“どこか”を目指していた私たち。
県を越えて、とある小さな山村へとたどり着いた。
そこで、
その“脱出劇”は呆気なく幕を閉じたんだ。
「君たち、何をしているんだ?」
私たちはすぐに保護されて。
“家族”の元へと帰された。
そして、それっきり。
先輩は、図書館の出入りさえも禁止されて。
私たちが会うことはなくなった。
元の生活が始まって…
前みたいに、心を眠らせるしかなかった私。
そんな私に近づいてきたのが……
航くん、だった。