迷子の眠り姫〜sweet kiss〜*下*
「立花を救ったのは、
間違いなく、航だよ。」
今度はまっすぐ。
私の瞳を捉えて、先輩は言った。
「アイツはすごいよ。
俺が、専門家に頼ってようやく克服した“問題”を、1人で解決しちゃったんだから。」
明るい調子で。
自嘲気味に笑って見せながら。
「アイツが…航がいたから、立花の“今”があるんだよ?」
「……っ」
「立花が航と出会ってなかったら…たぶん、俺と同じになってたと思う。」
2人で堕ちて…
2人とも抜け出せなくて…
今頃どうなってたかな?
「それに、航も…」
じわりと浮かんで来る涙。
必死でこらえていた私に、先輩は信じられないようなことを言い放った。
「立花に“救われた”んだと思うよ?」
「…えっ?」
「立花に出会って、“守る”ことを知った。
欠けていた“感情”を手に入れることができたんだ。」
先輩は続ける。
「だから、2人は離れちゃ駄目なんだよ。」