迷子の眠り姫〜sweet kiss〜*下*
「今日は私がおごるから。」
連れて来られたのは、大学近くのお店。
同じく茉奈と、お昼には何度か来たことはあったけど…
夜はこんな感じになるんだ?
「どれにする?」
きょろきょろしていた私に、明るい調子でメニューを広げる茉奈。
「飲み物は…これにしよう。みさきも同じでいいよね?」
「え?お酒はちょっと…」
茉奈が選んだのは、明らかにアルコール。
別に今さら“未成年だから”なんて躊躇したりはしないけど…
今日のこの精神状態で飲んだらマズイ気がする。
その後、家に帰らなきゃいけないわけだし…
「大丈夫、大丈夫。今日は泊まってっていいから。」
「え…?」
「パァーっとやっちゃって!」
そして、次々と。
メニューを選んでは、勝手に注文していく。
……ダメだ。逆らえない。
最近、バイトを始めた茉奈。
聞けば、今日が初めての“お給料日”だったらしく…
なんかやたら嬉しくて仕方ないみたいだ。
「はい、乾杯!」
気づいたときには、グラスを握らされていた。