迷子の眠り姫〜sweet kiss〜*下*
何、それ。
私の知らないところで、そんなこと…
「航ちゃんはさぁ、」
飲み干したグラスをどけて。
運ばれてきたお酒を一口飲んでから、茉奈はまた話し出した。
「みさきのことが、ずっと好きだったんだよ。」
……え?
「航ちゃんが入学して来たときからだから…もう6年?一途だよねぇ。」
しみじみと言う茉奈に、大きな違和感を覚える。
だって…
「入学したときからって…それは違うでしょ?」
航くんが私を“好きになってくれた”のは、もっと…少なくともあの事件よりも後のはず。
なのに…
「違わないよ。私、その頃から航ちゃんの“相談役”だもん。」
茉奈はそれをあっさり否定した。
「ずっと、だよ?
私、偉いと思わない?」
ぶすっと、頬を膨らませて続ける。
「航ちゃん、あの頃可愛かったでしょ?」
「うん…?」
「やたら懐いて来たから、私もちょっとウキウキしてたわけよ。なのに…」
“可愛い”男の子好きだもんね、茉奈。
今だにアイドルチェックは欠かさないし。
「航ちゃんってば、みさきの話しかしないんだもん。」