迷子の眠り姫〜sweet kiss〜*下*
「“みさき先輩みさき先輩”ってそればっかり。さすがに私もうんざりしたわ。」
……嘘だ。
そんなわけない。
「でもさ、あんな…
仔犬みたいな目で、健気に頑張ってる姿を見たら…
応援したくもなるでしょ?」
「頑張る…?何を?」
「何を、ってあんた…」
私を見て呆れたようにため息をついてから、茉奈は言った。
「相当頑張ってたでしょ?
みさきに近づけるように。
みさきに見てもらえるように。みさきに…」
“好きになってもらえるように”
「まさか、それも気づいてなかった…とか言わないよね?」
信じられない、と大げさすぎるくらいに驚いて見せてから、
「どんだけ鈍いのよ…」
茉奈はまた、大きなため息をついた。
「あんなわかりやすいアピール…誰が見たってわかるでしょ?」
そんな…
「航ちゃんはずっと、みさきのことが好きだったんだよ。」
「……っ。」
「みさきが、“先輩”とあんなことになる前からずっと、ね。」