迷子の眠り姫〜sweet kiss〜*下*
5年ぶりの恋心
「………え?」
玄関を開けて出迎えてくれた人物を見て、思わず固まってしまった。
だって……
「あ…。こんばんは。
あの、どうぞ……?」
俺を中へと促して、慣れた様子でスリッパを並べたのは……
「……なんで?」
無造作にまとめられた長い髪。
カジュアルな服装にエプロン。
大学で見かけたときとはだいぶ印象が違う。
完全に“家用”の格好だ。
まさか、いるとは思わなかった。
ここで会うなんて――
「…ああ。おばさん、今お風呂なんです。」
立ち尽くす俺に平然と言い放つ彼女。
「出てくるまで待っててほしい、って言ってました。
だから、上がって待っててください。」
どうやら、質問の意図を勘違いされたみたいだ。
「お邪魔…します。」
聞き直すのも何だし、
何より、彼女がさっさと中へ戻ってしまったから。
後を追うように俺もそれに続いた。