迷子の眠り姫〜sweet kiss〜*下*
君がいない日々
「…おーい、起きろーっ」
机に伏せて。
夢とも現実ともつかない、曖昧な意識の中で彷徨っていた俺に。
聞き慣れた声が届いた。
「もう昼休みだぞ。」
言いながら、椅子を引いて前の席に座って。
ガサガサと。昼飯らしき何かを広げ始めた悟。
「飯、食わないの?」
「んー…」
「具合悪いんなら、保健室行けば?」
「んー…」
「朝からずっと、その調子じゃん。」
「んー…」
視線を感じながらも、顔を上げることなく。
俺は適当な返事を繰り返す。
話す気力も、
起き上がる元気もない。
できれば放っておいてほしい…
伏せた顔を、さらにぎゅっと押しつけた。
そんな俺を見て、大きくため息をつくと、
「お前さぁ…大丈夫?」
呆れたような、でもどこか心配するような口調で聞いてきた悟。
「最近、おかしいぞ。」
「えー…?」
「明らかに、おかしい。
夏休み明けからずっと…」