迷子の眠り姫〜sweet kiss〜*下*
キスの温度
「……ん?」
誰もいない屋上。
ぼんやりと。
空なんかを眺めつつ。
ひとり静かに寝転んでいたところにパタパタと聞こえて来た足音。
それが止んで。
キィィと。ドアが開く音がした。
……誰だ?
ゆっくりと起き上がって、振り返ってみれば。
そこには、ドアの隙間からそっとこっちを窺っている…
「…なんだ。マドカか。」
マドカがいた。
「あ…あのっ、ごめんね。」
目が合うなり、慌てて謝ったかと思えば、
「悟先輩がね、コウちゃんはここにいるから呼んでこいって…。あ、今日は本棚の整理の日でね。3年生は忙しいから免除だって、先生は言ったんだけど、悟先輩が…」
これまた早口に、一気に要件を吐き出した。
息は大丈夫なんだろうか?
呆気に取られつつ、マドカを見ていると…
「じゃ…じゃあ、私はこれで!」
ドアを閉めて、出ていこうとする…って、
「おい、マドカ!」
なんで、そんなに焦ってるわけ?
「少し休んでから行けば?」