迷子の眠り姫〜sweet kiss〜*下*



俺が“好き嫌い”はないと答えると、



「……えらいですね。」



彼女はしみじみと呟いた。



「えらい……?」



いやいや、子供じゃないんだから。


そんな誉められるようなことじゃないと思う。


むしろ、当然のことだ。



「えらいですよ。
何でもちゃんと食べられるなんて。」



どうやら彼女にとっては重要ポイントだったらしく。


なんだかやたら感心しているみたいだ。


よくわからないけど……


さっきまで無関心・無表情だった彼女が、反応をしてくれたことは単純に嬉しかった。


なのに……

その淡い感情はすぐに打ち砕かれることになる。



「兄弟でも、全然違うんですね。」



「……え?」



「航くんは食べ物の好き嫌い、激しいから。」



困ったように言いながらも、柔らかい笑みを浮かべる彼女。



「今はだいぶ食べるようになったけど……

最初の頃は、献立を考えるのが本当に大変でしたから。」



< 25 / 334 >

この作品をシェア

pagetop