迷子の眠り姫〜sweet kiss〜*下*
俺が“好き嫌い”はないと答えると、
「……えらいですね。」
彼女はしみじみと呟いた。
「えらい……?」
いやいや、子供じゃないんだから。
そんな誉められるようなことじゃないと思う。
むしろ、当然のことだ。
「えらいですよ。
何でもちゃんと食べられるなんて。」
どうやら彼女にとっては重要ポイントだったらしく。
なんだかやたら感心しているみたいだ。
よくわからないけど……
さっきまで無関心・無表情だった彼女が、反応をしてくれたことは単純に嬉しかった。
なのに……
その淡い感情はすぐに打ち砕かれることになる。
「兄弟でも、全然違うんですね。」
「……え?」
「航くんは食べ物の好き嫌い、激しいから。」
困ったように言いながらも、柔らかい笑みを浮かべる彼女。
「今はだいぶ食べるようになったけど……
最初の頃は、献立を考えるのが本当に大変でしたから。」