迷子の眠り姫〜sweet kiss〜*下*




「私、“ファーストキス”はコウちゃんとがいい、ってずっと思ってたの。」



にっこり笑ったかと思えば、マドカは徐々に距離を縮めて来て。



「えっ…ちょっ…マドカ?」



気がつけば、その小さな掌が俺の頬をしっかりと捉えていて。

振り払おうと手を伸ばしたものの、やんわりと。それを遮られてしまった。



「別にいいでしょ?1回くらい。コウちゃんは初めてじゃないんだし…」



そりゃ、そうだけど…



「私のお願いを叶えると思って…ね?」



じりじりと近づいて来る、マドカの顔。

まっすぐに俺を見つめる瞳には、子供の頃の面影が残っているから…

反らすことはできない。


でも…



「……いい?1回…私に“思い出”をちょうだい?」


ゆっくりと、
近づいてくるマドカの唇。

閉じられた瞼と、
顔にかかる微かな吐息。


あと数センチ…



俺は……




















「…ごめんっ、無理!」



< 256 / 334 >

この作品をシェア

pagetop