迷子の眠り姫〜sweet kiss〜*下*
「私、“ファーストキス”はコウちゃんとがいい、ってずっと思ってたの。」
にっこり笑ったかと思えば、マドカは徐々に距離を縮めて来て。
「えっ…ちょっ…マドカ?」
気がつけば、その小さな掌が俺の頬をしっかりと捉えていて。
振り払おうと手を伸ばしたものの、やんわりと。それを遮られてしまった。
「別にいいでしょ?1回くらい。コウちゃんは初めてじゃないんだし…」
そりゃ、そうだけど…
「私のお願いを叶えると思って…ね?」
じりじりと近づいて来る、マドカの顔。
まっすぐに俺を見つめる瞳には、子供の頃の面影が残っているから…
反らすことはできない。
でも…
「……いい?1回…私に“思い出”をちょうだい?」
ゆっくりと、
近づいてくるマドカの唇。
閉じられた瞼と、
顔にかかる微かな吐息。
あと数センチ…
俺は……
「…ごめんっ、無理!」