迷子の眠り姫〜sweet kiss〜*下*
「まず、基本的に野菜が嫌いでしょう?
ピーマンとか、どんなに小さく刻んでもわかっちゃうみたいで食べないし。」
まるで母親みたいな口ぶりで、呆れたように彼女は言った。
「お肉とかお魚なら大丈夫なのかと思えば、それはそれで好みがあるみたいで……
とにかく、偏食ぶりがすごかったから。」
話しながらも、慣れた様子で冷蔵庫を開けて材料を取り出して。
包丁やらまな板やら、テキパキと準備を進めていく。
……自分の家みたいに。
「なんとか工夫して食べさせたから、今はほぼ克服できたみたいだけど……
昔から、あんな感じだったんですか?」
「……えっ?」
いきなりパッと顔を上げた彼女。
その姿をボーッと見つめていた俺。
ばっちり目が合って、瞬時に心臓が騒ぎ出す。
「航くん、小さい頃から、食べ物の好き嫌い激しかったんですか?」
「あー…」
どうだったかな?
思い出しながらも、チクチクと胸が傷む。
「航は……」