迷子の眠り姫〜sweet kiss〜*下*
君を失うその前に
はじまりは、
ごくごく“普通の”恋だった。
出会って
気になって。
好きになって……
まさに“初恋”。
そんな気持ちは初めてだったから。
どうしたらいいのかなんて全然わからなかったけど…
会いに行って。
話をして。
ゆっくり、でも確実に。
近づいて、俺のことを覚えてもらった。
名前を呼ばれたり
笑顔を向けられるようになったときは、
なんかもう、
たまらなく幸せで。
もう少し?
いや、まだまだ…
近づきたいけど、
これ以上はまだ無理。
なんせ慣れていなかったから。
“あと一歩”がなかなか踏み出せなくて。
もどがしく思いながらも、慎重に慎重に…
距離を計って、
時期を見計らっていた。
そのまま行けば、
“普通の”恋になるはずだったのに――
“あの”事件は起こった。