迷子の眠り姫〜sweet kiss〜*下*




確かに俺は、アイツの“存在”に囚われていた。


みさきとつき合い始めてからも、ずっと。

無意識に、アイツの影に怯えていた。




アイツがまた、みさきの前に現れたら?


俺からみさきを奪って行ってしまうんじゃないか…って。




だって、

俺の欲しいものは、いつだってアイツのところに行くんだから。

俺は手に入れることはできなかったんだから。


今度も――




ずっと、そんなふうに考えていた。



努力じゃどうにもならない。

それは、もう決まっていることなんだ、って…




でも…




みさきは“もの”じゃない。


“感情”を持つ“人間”なんだ。


だから、

みさきの“気持ち”は、みさきにしか動かせない。


他人が簡単に変えられるものなんかじゃない。



それは、俺やアイツに関しても同じことで…





そんな馬鹿げた不安にとり憑かれていた俺は、



みさきの気持ちも

自分の気持ちさえも




信じきれてなかったんだ。







俺はみさきを“好き”で

みさきも俺が“好き”。




ただそれだけで


よかったはずなのに――




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