迷子の眠り姫〜sweet kiss〜*下*
そこにあったのは、
最初から“好き”の気持ちだけ。
それに気づかなかった俺は、みさきを傷つけた。
だから、みさきはもう戻ってこない。
それは、当然の結果。
でも…
“好き”はまだ、ここにある。
みさきのところにも、きっとある。
だったら、
まだ“間に合う”んじゃないだろうか?
みさきが戻って来られないなら、俺から迎えに行けばいい。
俺が取り戻せばいい。
それが無理なら…
“最初から”始めればいいんだ。
余計なことは全部忘れて。
ただ単純に“好き”だけを持って。
新しく、やり直せばいい。
きっと―――
「……行こう。」
みさきに会いに行こう。
とにかく会って、
顔を見て。
まずは謝って…
そこから何かが始まるはずだから……
立ち上がって、走り出そうとした。
ちょうどその時――
ブーッ。ブーッ…
ポケットの中で、勢い良く鳴り出したケータイ。
こんなときに、何?
「ハイ…「もしもし、航ちゃん!?」
「え…茉奈さん?」
――「今すぐ来て!」