迷子の眠り姫〜sweet kiss〜*下*




――「だから、今すぐ来てほしいの!」



電話の向こうの茉奈さんは、どうやらものすごく焦っているらしく…



――「今、どこ?すぐ来れれる?場所はわかるよね?」



話がまったく見えない。



「茉奈さん?落ち着いて。
俺は“普通に”学校にいますけど「じゃあ、15分もあれば来られるよね?」



俺の言葉を遮って、なおもしゃべり続ける茉奈さん。

…まったく。



「…どこに行けばいいの?って言うか、何があったの?」



なるべく冷静に。

話の核心を促せば…



――「病院!」


「へっ?」


――「航ちゃんのお母さんが働いてる病院。」



え…?

なんでそんなところに?

考える暇もなく、茉奈さんは衝撃的な一言を言い放った。



――「みさきが倒れたの。」




……え?



――「だからすぐ来て。
って言うか、来なさい!」



みさき…が?


有無を言わせぬ迫力から、
事の重大さが伝わってくる。



――「航ちゃんには責任を取る“義務”があるでしょ?」


「え…?」


――「だって、みさきのお腹には…」











―――え?




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