迷子の眠り姫〜sweet kiss〜*下*
「食べ物の“好き嫌い”までは覚えてないけど……
確かに、アイツは昔から、あまり食べなかった気がする……」
だから、みんなよりもちっちゃくて…よく女の子に間違えられていた。
体も弱かったし。
それが、今じゃ……
「……へぇ。」
俺の話を、興味深そうに聞いている彼女。
……初めて見る表情。
航の話、だからなんだろうな。
「だから、アイツがあそこまで成長するとは思わなかった。たぶん…立花のおかげだと思うよ?」
「……え?」
「苦労しただろ?家族がどれだけ説得しても、食べなかったくらいだから。」
“好き嫌い”なんて許されなくて。
“食べきれない”は認められても、“食べられない”は認められなかった。
だから航は、我慢できる分だけ食べていた。
そして、結果的に、少食で偏食になってしまった。
あの人は、それがまた気に入らなかったんだろうな。
「私は、別に何も……
ただ、“好きな人”と一緒にご飯を食べたかっただけだから。」