迷子の眠り姫〜sweet kiss〜*下*




「…でも、よかった。」



ぽつりと呟いたかと思えば、



「航ちゃんが来てくれたんだもん。もう安心だ。」



俺のほうを見ながら、にっこりと微笑んだ。


え…?

怒らないの?


みさきがこんなふうになったのは、俺のせいなのに。

俺が傷つけて、
俺が追い込んで…


茉奈さんの大事な友達を、俺は……



「みさきはさ、
これでかなり意地っ張りだから。」



戸惑う俺をよそに、茉奈さんは話し続ける。



「自分からは会いに行けなかったんだよね。ホント、素直じゃないから。」



ふふっと、柔らかい笑顔で微笑んだ。



「会いたくてたまらないくせに無理しちゃって。」


「え…?」


「だから、こんなふうになっちゃったのよ。」



我慢の限界値を越えちゃったんだね、と。



……それは、違う。

違うよ、茉奈さん。


悪いのは、全部……



「あとは航ちゃんに任せた!」


「え…」


「って言うか、あとは2人で解決しなさい。」


「茉奈さ…「じゃっ!」



ポン、と。
俺の肩を叩くと。


“バイトあるから”と、
茉奈さんは病室を出ていった。



残された俺は―――




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